br> (市村自然塾 関東 OB会)
第1ステージから1ヶ月が過ぎました。自然塾周りの山々は萌黄色から、新緑へと日に日に濃さを増しています。畑の作物も同様、定期的に降る雨のおかげで 順調に発芽し、ぐんぐん成長しています。今ステージはキャベツとレタスの苗を植えつける予定でしたが、土曜日が一日中雨だったために農作業ができませんでした。また、ジャガイモやゴボウ、ダイコンなどこれまでのステージで種をまいた作物についても次の段階の世話をする予定だったのですが、作業ができませんでした。しかし、チーム農園では今回どのチームもメロンをはじめ幾つかの野菜の苗を植えつけることができました。温室で大事に育てられてきた苗を畑に植え替えるデリケートな作業ですので、育てはじめの今だからこそ思いやりを持って今後のことまで考えて世話をしてあげなければなりません。また、夜の塾活動ではマナー講座を実施し、共同生活や社会の中でのマナー=思いやりについて考えました。そこで、今ステージのテーマを「思いやりを持って作物や人に接しよう!」と掲げました。
また30人近くの塾生が 3日間一緒に生活をする自然塾では、たとえ1人でも時間に遅れると、みんなに迷惑がかかってしまいます。一人ひとりが時間を守ることは、みんなが自主的で自由な生活をするための、果たすべき最低限の約束だと考えて、共同生活の目標を「時間を守る」とし、時間を意識して生活してもらいました。
女子第3ステージを始めるにあたり、テーマと目標について、塾頭とステージ担当から話がありました。
「野菜は思いやりに対して正直です。野菜を育てる時は思いやりを持って世話をしないと元気に育ちません。これは人に対しても同様で、思いやりを持って接すれば相手も応えてくれます。また、塾はスケジュールに則って動いていますから、一人が遅れると全体がどんどん遅れてしまいます。これまでは塾での生活に不慣れで遅れがちでしたが、今後は時間を意識して生活するようにしましょう。そして、早く作業が終わった人は遅れている人を手伝ってあげてください。時間を守ることで周りの人から信用され、友達もできます。今回は天候のために室内作業が増えるかもしれませんが、その中でも時間を守りましょう。」
ステージ担当からは思いやりのある人になるにはどうすればよいかという話と、時間はとても大事であること、それを守ることで他人から信頼され自主的で自由な生活ができること、集合時間以外にも他の時間も意識して守ること、などについて話がありました。
『足音(あしおと)を聞かせれば聞かせるほど作物はよく育つ。』と言われます。これは、畑に足を運んで作物の様子を観察して、作物が必要としている世話をしてあげることを指します。自然塾では、『あしおとツアー』と題して畑を巡り歩いて作物を観察し必要な世話をしてあげる活動を行ったり、『あしおとだより』と称して塾生の居ない間の畑の様子を知らせたりしています。今回は雨天のため農作業をできない替わりに、塾生がこれまでに駆け足で教わってきた農作業の基本と今後の活動で必要になってくる世話について屋内で学習しました。
前半は、野菜のグループ分け、作付け計画、種まきと育苗、農具について紹介しました。後半は土作りや種まき、肥料、病害虫対策と自然農薬など野菜づくりに関する具体的な話をしました。どれも大事な事ばかりで、よく整理して話をしたつもりでしたが、残念ながら小学生には難しく、また時間が長過ぎて集中力が続かなかったらしく、最初は一生懸命だった塾生たちも頭に入りきらなくなってしまった様子でした。
お昼ご飯を挟んで午後も引き続き雨天であったため、屋内でチーム農園に立てる看板の制作を行いました。各チームには、チーム名を記した大きな看板を一つとチーム農園で育てる作物の名称を記した小さな看板を作物の数だけ作ってもらいました。
はじめにステージ担当から工具の使い方について説明を受けてから、実際に自分たちの手で木材を切り分けていきました。
材料ができたら鉛筆で下絵を描きました。これを色とりどりのマジックで清書して、柄(え)と板を釘で固定したら完成です。
やはり受け身な活動よりも行動的な方が楽しい様子で、塾生たちはそれぞれの持てる創造性を遺憾(いかん)なく発揮して作品を仕上げていました。今回は完成に至るチームはありませんでしたが、完成・設置して畑に並ぶのが楽しみです。
いよいよ今ステージから、チーム農園で作付けが始まります。そこで先ステージの作付け計画の発表で指摘を受けたところなどを再検討し、計画を練り直す時間をと りました。
まず初めにステージ担当からチーム農園ファイルの使い方を再確認するための説明があり、続いて、各チーム毎に病害虫対策や種苗の作付時の世話について再検討を行なってもらいました。午前中の長い講義が少しは役に立ったのか塾生たちは熱心に書物を調べていました。調査や話 し合いを重ねてメンバーの認識を1つにし、チーム全員でチーム農園を作り上げていきましょう。
夜の塾活動では、ボランティアの百瀬さんと一緒にマナーについて考えました。
はじめに、マナーとは何かを話しあって「周りの人に嫌な思いをさせないための思いやり・心遣い・気配り」だという風に考えました。続いて「どうぞのいす」という絵本を読み聞かせてもらい、それを確認しました。
次に、チーム毎に「通塾」「食事」「入浴」の3つの場面で、どんなマナーが必要かを考えてから発表してもらいました。様々なマナーが発表されましたが、これらを皆さんは実際に守っていますか?これからは、「知っている」だけではなくて、「守っている」になるように頑張りましょう!
自然塾では土曜日の夜にリーダー会議が開かれています。この会議には、塾頭とステージ担当、各チームのリーダー、サブリーダー(リーダー不在の際は必須で、不在でなくても希望すれば)が参加します。ここでは、チーム内での困り事や出来事、メンバーからの提案などについて、議案を持ち寄って皆で話し合い解決します。今回は特に議案がなかったので、塾頭からチームリーダーの仕事について話がありました。
一晩あけると晴れていました。どのチームもチーム農園の作付け予定が立て込んでいたため、この日の活動時間は丸々チーム農園の時間に当てましたが、前日に共同農園で体験する予定だった苗の植え付け方を塾生たちは学習できませんでしたので、ステージ担当が短時間で簡単に見本を示しました。
いよいよチーム農園作業です。まずは作物を植えつける前の作業として区画割りした作付け予定地に畝(うね)をたてます。
続いて根鉢(ねばち)を水にたっぷりと浸した苗を先ほど教わった通り丁寧に植えつけていきます。株の周囲には今後2週間分のお弁当として肥料を埋めてあげました。
ただ植え付けて肥料をあげただけで終わりではありません。特に温室育ちの箱入り娘であるメロンには、まだまだ朝晩に冷え込むこの土地の寒さは絶えられませんので、藁(わら)を敷いて足元を暖めてあげました。
さらにネットやビニールでトンネルを作って害虫や雨から苗を守ってあげることも大切です。たった一種類の作物のために、こんなにも世話が必要なのですね。
他にも限られた時間の中で、ポットと呼ばれる育苗鉢に種をまいたり、メロン以外の苗を植えたりもしていました。写真の塾生はトマトの苗を植えつけた後に支柱に麻ヒモで誘引という作業をしています。作物によっては次のステージになると時期がずれてし まうものもあります。今回は時間がないからと言っても、人間の都合に合わせて自然は待ってくれないのです。タイトなスケジュールの中で皆がんばっていました。
ステージを終えるにあたってテーマと目標について塾頭から振り返りのお話がありました。「野菜もペットと同様に声をかけながら思いやりの心を込めて丁寧に世話をすれば立派に育ちます。思いやりはマナーの基本でもあります。時間を守ることは大事なことですし、相手に信頼されます。遊びを止めて集合したり、朝起きるのは勇気の要ることですが、自分に強い人になれるように頑張りましょう。一瞬一瞬の時間の積み重ねが一生になるのですから、(時にはリラックスも必要ですが)精一杯その時を過ごしましょう。」
今回の塾活動では、雨に祟られ(たたられ)予定していたキャベツとレタスの苗を畑に植え付ける作業を体験したり、芽が出たばかりの作物を観察して必要な世話を考えることができませんでした。ただ、チーム農園の計画見直しや看板作り、そして実際の作業を進めることができ、塾生たちが戸惑いながらもワ クワクして取り組んでいる姿が印象的でした。塾生の成長にとって、自然塾に慣れてきたこの時期は大切な時期です。慢心したり中だるみをしたりせずに良い習 慣を身につけてしまえば、段々とそれが当たり前となり苦にならなくなります。「初心忘るべからず」というわけですね。
共同生活の目標「時間を守る 」については、如何に時間を守ることが難しいかを実感した塾生も多かったのではないでしょうか。守るべき最低限のルールやマナーを守ることで、お互いの自由と尊厳とを守っていきましょう。
H.T.
ほかにもイロイロあんなこと、こんなこと。自然塾豆知識コーナー