br> (市村自然塾 関東 OB会)
立春から数えて88日めの5月2日、雑節(二十四節気以外で季節の目安となる節目の日)の八十八夜を迎えました。山々は黄緑色がまぶしく、お茶の木にも新芽が伸び始めています。そこで今ステージのテーマを「お茶つくりに挑戦し、新茶の味を楽しもう」とし、自分たちで摘んだ葉でお茶をつくってその味と香りを満喫しました。
また、ルールを守ってこそスポーツやゲームなどを楽しめるのと同じように、塾での生活や日常生活もルールを守った上で楽しんで欲しいという想いから共同生活の目標を「ルールを守る」としました。
自宅を出発し、通塾時間の長い塾生は3時間ほどかけてやっと自然塾に到着します。電車やバスの移動から開放され、元気いっぱいにバスから降りてきました。山道でバス酔いしてしまった人も新鮮な空気を吸って気持ちが良さそうです。
夕食をいただいた後、ステージのはじめに枝村塾頭よりお話がありました。
「皆さん元気に塾に来てくれました。塾生活にも慣れてきたようですが、食事中に騒ぐのはマナー違反ですね。思いやりの心は忘れないようにして欲しいと思います。また、最近『新型インフルエンザ』で騒がれていますが、体がだるい時や熱っぽい時などは早めに申告するようにしてください。咳をする時に口を覆うなど周りへの配慮もするようにしましょう。
明日は八十八夜でお茶摘みや農作業に適した季節です。畑へ足を運び、作物の成長を感じて思いやりの心を持って丁寧に世話をするようにしましょう。
今回の共同生活目標は『ルールを守る』ですが、時間やルールを守るために自分を抑えるのはとても勇気のいることです。しかしルールを守ってお互いに気持ちよく快適に過ごせるようにしましょう。ルールを守ると周りの人から信頼されます。」
はじめに、今年の春に出てきた新芽(茎が黄緑色の部分)を摘むこと、通常のお茶は先端から5枚めの葉まで(一芯五葉:いっしんごよう)を摘むことの説明がありました。
実際にお茶の葉を摘みました。お茶摘みの歌にもある八十八夜の縁起の良い日に摘むことが出来ましたが、自然塾のある寄(やどりき)地区はやや気温が低いため、新芽にまだ葉が3枚しかついていないものも多くありました。この地域では95日め頃に一番茶(その年初めてのお茶の葉)を摘むことが多いそうです。
柔らかなお茶の新芽は、そのまま食べることもできます。食べてみた塾生は、甘くちょっぴり苦いお茶の風味を楽しんでいました。
植え付けをする前に、まず畝立てを行いました。今までのステージで何度も使ってきたためクワの使い方にも大分慣れてきたようです。
苗を並べ、全体がバランス良い間隔になっていることを確認してから一つ一つ丁寧に植え付けていきました。前回植え付けたキャベツ・レタスの苗と同様、地上に出ている葉や茎、そしてポットの中に伸びている根を痛めないように優しく扱うことが大切です。
トマトはつぼみが付いている部分に花が咲き実がなるので、つぼみを通路側の同じ方向に向けて植え付けをすると収穫など後の世話がしやすくなります。
肥料をあげ土を被せた後に、支柱を立てていきました。この支柱にくくりつけることで、成長した時に自分では立っていられない作物やたくさんの実がなって倒れやすい作物を支えることができます。支柱を立てる時のポイントは方向と距離。作物に降り注ぐ太陽の光を遮(さえぎ)らない北側で、近すぎて根を痛めたり遠すぎて作物の支えにならないことのないように注意しながら支柱を立てました。
次に、誘引(ゆういん)といって作物の茎と支柱をヒモでくくりつけて伸ばしたい方向に誘導する作業を行いました。引っ張りすぎると葉を折ってしまったり茎に傷をつけてしまったりするので、ここでも注意が必要です。引っ張りすぎないように余裕を持たせて結ぶ「8の字誘引」を行いました。
最後に、畝にワラを敷(し)いていく敷きワラを行いました。畝の保温・保湿、雑草を生えにくくする、雨によって葉の裏側に泥がはねて病気になるのを防ぐなどの目的があります。今回は「疫病(えきびょう)」という病気になりやすいトマトのみ敷きワラをしました。
昼食後、現代礼法研究所の岩下先生よりマナーのお話をいただきました。「マナーは『愛』であり『心』です。相手への思いやりの気持ちが表れたものなんですね。自分がされたいことを相手にする、相手の立場になって考えて行動することが大切です。日本に『love』という言葉が入ってきた時『大切』という言葉に訳されました。大切に思う気持ちを行動に表したマナーは愛そのものです。」
また、お箸(はし)やお茶碗の持ち方など食事のマナーの基本的なことから、笑顔であいさつをすることの大切さや言葉遣(づか)いで相手に与える印象の違いなどたくさんのことを教えていただき、「お母さんがあなたに牛乳を飲ませるのも、あなたが少しでも健康でいて欲しいという愛情の表れだと思うな」など塾生の質問や相談にも丁寧に応じてくださいました。
まず始めに、お茶の歴史やお茶の種類、本来のお茶の作り方について説明がありました。話を聞いて、お茶が今から1200年も前から飲まれていることや、ウーロン茶や紅茶、緑茶などが同じお茶の葉から作られていることに驚いている様子も見られました。
本来の作り方ではお茶作りには4時間以上の時間がかかりますが、今回は簡単にアレンジした方法でお茶を作りました。
(1)お茶の葉を摘む(2)蒸す→1分蒸した後、裏返してもう1分蒸す(3)あら熱を取る→広げて余分な熱と水分を飛ばす(4)ホットプレートで180℃で煎る→箸を使って焦(こ)げないように混ぜる(5)湯気が出なくなってきたら手で揉(も)んでお茶の葉を棒(ぼう)状に丸める(6)乾燥し始めたら160℃にし、完全に乾燥させる
完成したお茶を使って自分たちでお茶をいれました。おいしいお茶をいれるポイントは、(1)お茶の葉をたっぷり使う(2)ぬるめのお湯を使う(3)じっくり時間をかけて出す(3~5分)(4)各湯飲みに、少しずつ何回かに分けて注ぐの4つです。
時間をかけて完成したお茶を前に、乾杯をしてから味わっているチームもありました。チームごとのお茶を飲み比べてみた塾生もいて、少しずつ異なる味を楽しんでいました。しっかり揉んで葉の表面に傷をつけたチームほど風味がよく出ていたようです。
たくさん出ていた芽を欠き取っていく作業を行いました。芽をたくさん残したままにしておくと、芽が伸びることにばかりエネルギーを使ってしまって小さなイモがたくさんできてしまいます。そこで2本の芽を残してそれ以外の芽を欠き取りました。力任せに引き抜くと種芋ごと土から出てしまってその株はダメになってしまうので、片方の手で株元をしっかり押さえて慎重に芽を引き抜きました。
芽欠きの後は、追肥と土寄せを行いました。ジャガイモは始めの頃に肥料をたくさん必要とする作物なので多めに肥料を撒き、その上に土を寄せていきました。土寄せは、肥料を分解しやすくすることや雑草が生えにくくすることだけでなく、地上部が倒れないように支えること、イモが大きくなった時に地上に出てまずくなってしまわないようにすることなど多くの目的があります。
午前中の夏野菜の植え付けに続き、同じく夏野菜であるキュウリの植え付けを行いました。
ウリ科の作物は寒さに弱いこと、ウリハムシという害虫に狙われやすいことから植え付けをした株の周りにホットキャップを被せました。チーム農園でキュウリを植え付ける塾生たちは特に真剣に聞いて作業していました。
前回のステージでチーム農園に鹿よけネットを張ろうという意見が出ました。しかし、時間が足りず張り終えることができなかったので夕食前の時間を利用して鹿よけネットを張りました。
まず、自然塾の周りや山の中など自然界にはどのような危険生物がいるかをチームごとに話し合ってもらいました。
各チームの意見を聞いてから、それぞれの生物の被害に合わないようにする工夫やもし被害に合ったときの応急処置の仕方の説明がありました。基本的に、むやみに生物を刺激しないことと自然塾で決められた農作業着(長袖・長ズボン・帽子・タオル・軍手)を着用することで自分の身を守ることが大切ですね。
オカボは畑で育てるイネのことで、水田を確保しにくい山間部で育てられています。まずは種をまくための溝を切りました。この時、溝の底を平らにならさないと芽が出揃(でそろ)わなくなってしまいます。
溝が切れたら、種もみを一粒一粒丁寧に撒いていきました。途中で飽きてしまう塾生もいれば、楽しんで「いつまででもやっていられる!」と言っている塾生もいました。細かい作業は一人一人の性格が表れますね。種もみの上に優しく土を被せて作業を終了しました。
ところで、キラキラ光るテープを張ってあるのは何のためだったか、覚えているでしょうか?
今回のおやつはニンジンポッキー。今までのように一人ひとつではなく、チームごとにひとつの器にたくさんおやつが入ったものが配られました。思いやりの心を持って仲良く分け合って食べることができたようです。
おやつ後のチーム農園作業を楽しみにしている塾生が多く、「チーム農園作業を早く始めたい!」という声がたくさんあがりました。協力し、自分たちで工夫して作業する喜びを感じているようです。
暖かい季節を迎え、チーム農園でも種まきや植え付けをする作物がたくさんあります。時間内に作業を終わらせるため、前もって自由時間の中でしっかり計画を練るだけでなく一人ひとり分担した作業のメモを用意しているチームもありました。
また、共同農園作業で学んだことを生かして真剣に取り組んでいる様子が多く見られました。
ステージのまとめとして、枝村塾頭よりお話がありました。
「今回、岩下先生より『マナーは愛』『マナーは心』というお話がありましたが、今までの共同生活目標『あいさつをする』『人の話を聴く』『時間を守る』『ルールを守る』も相手を思いやる基本的なことです。これからも実践(じっせん)するようにしましょう。また、自然塾では出されたものをすべて食べるようにしているが、何のためだか分かりますか?いただきますやごちそさまは何のために言うのでしょうか?食べ物もかつては命を持っており、その命をいただいています。命を粗末にせず、家や学校でも残さず食べるようにしましょう。思いやりと感謝の気持ちを忘れずに過ごしてほしいと思います。」
今ステージではやるべき農作業が多く、自由時間を削ってチーム農園作業の計画を立てたり鹿よけネットを張ったりしました。過密なスケジュールの中、忙しさに対して文句も言わずに頑張っていた塾生が多かったことがとても印象的です。
これからは、思いやりの心を持ち協力し合ってこそ達成できる喜びを少しずつ感じて欲しいと願っています。
<Y.S.>
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