br> (市村自然塾 関東 OB会)
今ステージのメインイベントはシダンゴ山ハイキングでした。山や森に分け入って自然を観察し、この地域の自然を知ることが目的となっています。また、ハイキングを通して自分の体力を知るという目的もあります。さらに、自分たち人間は自然の中の一部であるということを感じ、考えてもらう機会でもあります。そこで、上記のテーマを掲げました。
共同生活の目標は、今回から塾生全体で話し合って決めてもらいました。ただし塾生が不慣れなうちはステージ担当が司会進行役を務めながら皆の意見をまとめました。その結果、今ステージはシダンゴ山ハイキングがあり、いつもと違った場所での活動となるため、『ルールとマナーを考えて活動する』という目標に決まりました。
ステージを始めるにあたり、木全塾頭からお話をいただきました。
「運動会で欠席者が多いが、リーダー不在でもサブリーダーを中心にしっかりやること。明日はハイキングに行くが、心を和ませてくれる自然と触れ合い楽しむこと。自分を信じて体力を試し頑張って達成感を得ること。今までの自分を見つめ直す機会とすること。浮かれて怪我などしないようルールやマナーを守って行こう。」
続いてステージ担当から明日のシダンゴ山ハイキングの目的が説明されました。
1. 生きもの(植物、昆虫、野鳥など)の観察を通して地域の自然を知る。
2. 自分の体力(の限界)を知る。
3. 里山の自然環境の変化と人との関わりについて学ぶ(自然の中の自分を知る)。
秋晴れの素晴らしいハイキング日和でした。
準備体操を念入りにしてから、ハイキングの心構えやマナーを確認し、早速出発です。
ハイキング中に歩く順番は自由です。体力に自信のある(お調子者の?)塾生から先頭を奪い合うように歩き出しました。
ルートの確認をするために登山道の入り口で最初の小休止をとりました。はじめに宮地山という小さな山を登ってからシダンゴ山を登頂します。また、3つの感謝についてステージ担当から説明がありました。
すなわち、1. 迎え入れてくれる自然に感謝、2. 登山道を造り維持してくれている人たちに感謝、3. 山に登れる自分を支えてくれている人たちに感謝、です。
宮地山山頂では、『ネイチャービンゴ』という森の宝物を探すゲームを行いました。
配られた紙には、9つのマス目に探し物が書かれています。それをグループで探し当てたらマス目を塗りつぶし、3マス連続して塗りつぶせると1ビンゴ!制限時間内に幾つビンゴできるかを競ってもらいました。最後に皆で見つけたものを披露し合いました。こうして遊びながら色んなところに目を向けてみると、自然の中から面白いものがたくさん見つかるようになるのです。
宮地山を少し下ってから再びシダンゴ山の山頂を目指して登りました。それにしても良い天気なので、つい歩みが速くなりがちでした。
先ほどの自然体験プログラムが功を奏したのでしょうか。塾生たちの五感が自然に対して開かれたようで、様々な小さな驚異を発見していました。
晴れやかな表情で、登頂の喜びを表現します。最後の休憩地点である8合目までは比較的緩やかな傾斜が続きますが、最後は一気に傾斜が急になっていて心臓破りの階段が続きます。そこを頑張って登りきると最高の達成感を味わうことができるのです。
山頂には小さな祠(ほこら...神を祭った神社のようなもの)があり、その横の石碑にはシダンゴの由来が書かれています。内容は...自分の目で確かめた人だけの秘密にしておきます。
絶景を楽しむのもそこそこに「お昼だ?!」と弁当を広げる塾生たち。そう、彼女たちには「花より団子」の方が大事なのでした。いつもとは違った運動に相当お腹が減ったことでしょう。「あっ」という間に平らげてしまい、おやつとして配られた海老煎を縦にかじる塾生なのでした。
全員で記念撮影をしました。あとは下山するのみです。
下山途中のスギ林の中で、再びグループで活動を行いました。内容は、そこにある自然物を使って『シダンゴ山ハイキング』を表現するというものです。
各チームで相談し合いながら、限られた材料を使って自分たちのアイデアを形にしていきます。みんな限られた時間の中で思い思いの作品を作ることができました。
最後に完成したアート作品をチームごとに披露し合いました。
さらに山を下ったところでステージ担当から話がありました。
「皆さんは『林』と『森』の違いが分かりますか?『林』は色々な人手が加わっているところを、『森』は人手があまり加わらず自然が豊かなところを表しています。次に、皆さんは『里山』という言葉を知っていますか?『里』は人家が集まり人間が生活をしている場所です。反対に、その人里から遠く離れたところに森に覆われた『山』があります。『里山』はその中間にある、ごく身近な自然です。
里山の自然環境は、そこに住む人々が長い時間をかけて、代々農業を続けながら暮らしているうちに出来上がりました。昔は人が里山の雑木林に入って木を切り、それを生活の資源として活用していました。おかげで森には光が入り、沢山の生きものが棲める豊かな環境ができていたのです。しかし、徐々に生活スタイルが変化し、人は里山の雑木林に手を入れなくなりました。その結果、森は荒れ、動物たちの餌が減り、限られた生き物しか棲めない環境になってしまったのです。
日本は気候条件に恵まれているので、どこでも森林が成り立ちます。植物は大気中の二酸化炭素を固定しますが、木は寿命が長く体も大きくなるので蓄える量も多いのです。つまり森林は炭素の超巨大な貯蔵庫なのです。地球の温暖化を防ぐには、二酸化炭素の排出量を減らすことも必要ですが、森林を減らさないようにすることも大切です。」
全員が元気一杯に帰ってくることができました。塾舎に入る前に塾庭の芝生で一人一人に感想を言ってもらいました。「辛かったけれど綺麗な景色を見れて良かった」「自分の体力を知ることができた」など...。みんな疲れた様子ではありましたが、とてもいい表情をしていました。
シダンゴ山ハイキングから帰塾するのが予定よりも早かったため、解散後の自由時間が大幅に延長されました。そこで、翌日の作業時間の短さを懸念して、どのチームも自主的にチーム農園作業をはじめました。
夜の塾活動では、ハイキング中に書き溜めておくように促した俳句の中から1句を選んで清書し、全員の前で発表してもらいました。
みんなの前で自分のつくった俳句を詠み、そこに込めた思いも発表してもらいました。
自分と似たようなことを感じた人、全く別の視点だった人など様々。これだけの人数がいると本当にたくさんの感情が集まるので、共感や発見がたくさんありましたね。
本来であれば、18ステージに予定している餅つきに向けてオカボ(陸稲)を収穫する予定だったのですが、今年は発育が悪くて未熟なため、収穫作業を次回ステージに延期することにしました。替わって、今が旬のラッカセイ収穫を今ステージ唯一の共同農園作業として行いました。
抜けるような青空の下、まずは地上部を引き抜いていきます。一緒に抜けてしまったラッカセイの実はここで落とします。ところで、皆さんはラッカセイの実は地下にできることを知ってましたか?
続いて、ハクビシン除けの金網ネットを外してから、地下に埋もれているラッカセイの実を探し掘りします。丁寧に作業したつもりでも結構残っていますからね。時間をかけてせっかく実ったのですから大切に拾いましょう。
回収した実は混入した根や葉などのゴミを取り除いてから泥を洗い流しました。これを包装して自宅への土産にしてもらいました。家に着いても直ぐに調理しない場合は、よく乾燥してカビが生えないようにして欲しかったのですが、みんな美味しく食べれたかな?
共同農園作業が終わると、少ない時間ではありましたが、チーム農園作業の時間となりました。
どのチームも新しく種をまいたり、ポットで育てた苗を畑に植えたりしていましたが、このチームは以前からの作物の収穫だけを行なっていました。新しい作物がちゃんと育つように丁寧に作業しましょうね。
ただ単に種まきをしたり苗を植えれば良い訳ではありません。肥料をあげたり、卵の殻をまいたり、虫除けのネットを張ったり、鳥除けのテープを張ったりと作物ごとに必要な世話を考えて実行することが大切なのです。このチームでは前回まいたホウレンソウの種が発芽しなかった反省を踏まえて、今回は土壌に石灰を入れて酸性に傾いた土壌をアルカリ性に近づけていました。
ステージを終えるにあたり、木全塾頭からお話をいただきました。
「シダンゴ山ハイキングのアンケートを見ると皆それぞれ色んなものを発見したようだ。普段と違った素敵な環境で感じるものがあったのだと思う。私は特に達成感と気持ちよさを感じた。そんな気持ちの良さを感じさせてくれる自然環境に恩返しをしないといけない。水や電気の無駄遣いをやめたり、エコライフを心がけて欲しい。
そして、3つの感謝の話があったように、自然はもちろん、自分を健康な体で送り出してくれた家族、一緒に声を掛け合いながら登ってくれた仲間やスタッフ、また、朝早くからお弁当作りをしてくれた厨房スタッフにも感謝しなければならない。『お蔭様』の心を忘れずに生きていこう。」
今ステージは丸一日を費やしてシダンゴ山ハイキングに出かけました。道中4つの自然体験プログラムを行い、ただ漫然と登るだけではなく俳句しながらハイクしてもらい、森の宝物を探したり、自然物を使ってアートを作ったり、人間と自然との共生について考えてもらいました。そして、生き物の観察を通して地域の自然を知り、自分の体力を知ると同時に、自然の中の自分たち人間について学んでもらいました。
残り4ステージとなりました。何事も一生懸命に頑張る塾生と適当にこなしてやっているように見せるのが上手になった塾生とにハッキリ分かれてきているのが残念です。学び成長するためには、時には歯を食いしばって頑張ることも必要です。今回のハイキングで最後の急な階段を苦労して登ったからこそ達成感を感じることができたということが何よりの証拠です。楽をしたり自分に甘いままでは、いつまで経っても今のままです。自分を成長させるためには努力するより他に方法はありません。残りのステージを悔いのないように頑張りましょう。
H.T.
ほかにもイロイロあんなこと、こんなこと。自然塾豆知識コーナー