2011.09.30~10.02
第14ステージ ~女子~
ステージテーマ:「里山ハイキングを通して自然と人間について考えよう!」
共同生活の目標:「今までの目標の中から個人で一つ選ぶ」
 今回のステージは、シダンゴ山にハイキングに行きました。ハイキングには3つの目的がありました。1つ目は「地域の自然を知る」こと。2つ目は、「自分の体力(の限界)を知る」こと。3つ目は、「里山の自然環境の変化や人間との関わりについて学ぶ」ことです。これらの目的を達成するために、上記のテーマを掲げました。
 共同生活の目標は、今までに6つの目標を2回ずつ取り組んできました。塾生たちには残り少なくなってきたステージを、さらに自主性を持って活動に取り組んでもらいます。そこで、それぞれが苦手だったり難しいと感じたりする目標を個人で選び、実践してもらいました。
■ 09月30日(金) 夜の集い
 ステージの始めに、枝村塾頭からお話がありました。
「2週間前に、大きな台風が上陸しました。塾でも、畑の作物や支柱などが倒れて被害を受けました。地震、台風と、今年は自然災害が続いています。
 そんな中、多くの人に感動を与えている話があります。東日本大震災の後、ある中学生が卒業式で『地震で辛い思いをしたが、自然を恨まずお互い助け合って生きていこう。』と、泣きながら答辞を述べたそうです。この言葉は大きな感動を呼び、インターネットなどを通じて多くの人に広まっています。
 自然は、時には災害が起こって恐ろしいものです。ですが、多くの恵みも与えてくれています。災害に遭っても自然を恨まず、前を向いて立ち向かえるような人になってほしいと思います。
 明日はハイキングです。自然を十分に味わえるでしょう。ただ山に登るだけではなく、森や生き物がどのように関わりあっているかよく観察して、自然の美しさ、大切さを感じて下さい。自然を慈しむ心がどんなものか、私たち人間が自然とどのように関わればよいかも考えてほしいと思います。
 同時に、自分の体力、気力を試してほしいと思います。登山道には、何箇所か大変なところがあります。今まで農作業を頑張ってきた証(あかし)として、ハイキングも最後まで頑張って下さい。そうすれば素晴らしい景色が待っています。
 遂に第14ステージまで来ることができました。今回、みなさんがハイキングに行くことができるのは、たくさんの人が支えてくれているおかげです。おかげさまの気持ちを持って臨んでほしいと思います。」
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~出発~
 朝。天気に恵まれ、絶好のハイキング日よりとなりました。服装や荷物の用意を整え、入念に準備体操をしたら、いよいよ出発です。
 歩く順番はチームとは関係なく自由です。それぞれが自分のペースで歩き始めました。
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~登山道入り口~
 登山道の入り口で、これから歩くルートを確認しました。宮地山という小さな山の頂上を通って、奥のシダンゴ山へ登ります。 
 ここでスタッフから「3つの感謝」の話がありました。
「感謝の気持ちの反対は『当たり前と思う気持ち』ではないでしょうか。私たちが当たり前のように山に登れるのは、3つの条件が揃っているおかげだということを覚えておいて下さい。3つの条件とは、①自然を棲(す)みかにしている生き物に許してもらい、私たち人間は山に入れること、②多くの人が山登りを楽しめるように、登山道を切り開いて管理してくれている人がいること、③家族や、塾のスタッフ、周囲の人々の支えがあって、今こうして山登りが出来ること、です。」
 塾生たちは、真剣な表情で話を聴いていました。
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~登山~
 宮地山の頂上を目指して出発し、登山道に入っていきました。登山道は細い上に傾斜がきつく、足元に注意して歩かなければなりません。
 塾生たちは、落ちている長い木の枝を杖にして、息を切らしながら登っていきました。「まだ着かないのー?」と、早くもバテた様子の塾生もいました。
■ 10月01日(土) 自然体験プログラム ~ネイチャービンゴ~
 宮地山の頂上に到着しました。ここでは、「ネイチャービンゴ」というゲームを行いました。各チームに配られたビンゴカードには、数字の代わりに「どんぐり」「自分の顔より大きな葉っぱ」などの項目が書いてあります。それに当てはまるものを周りの自然の中から見つけて、カードに丸をつけていきます。丸が1列並ぶとビンゴです。
 塾生たちは早速あちこちへ繰り出して、見つけるのに夢中になっていました。
「見つけた!」という声の近くに駆けつけていったり、「これって当てはまるのかな?」とチームの仲間と相談したりしていました。
 そして結果発表です。塾生たちは、みんなで見つけたものを見せ合いました。ハチの巣のカケラや、鳥が木にあけた穴など、面白いものがたくさん見つかりました。
 塾生たちはこのゲームを通して、自然をよく観察し、五感を研ぎ澄ますことで、たくさんの発見があることを学んだようです。ビンゴが終わった後の登山道でも、木の実や大きな葉っぱを見つけていました。
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~登山~
 宮地山に別れを告げ、再びシダンゴ山の頂上に向けて出発しました。
 2週間前の台風の影響で、登山道のあちこちで大きな木が倒れていました。塾生たちは台風の威力に驚きながら、木の幹をまたいで先へ進んでいきました。
 途中で何度か休憩しました。
 塾生たちはおやつを広げて一休み。持っているおやつを友だちと交換したり、一緒に食べたりと、楽しいひと時を過ごしていました。
 橋の上で記念撮影をしました。ここまで来れば、頂上まではもう少しです。
 塾生たちは、徐々に自分の歩くペースをつかんでいったようです。疲れて表情が険しくなりながらも、粘り強く登っていきました。
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~頂上~
 頂上へ続く最後の坂道は、自然塾では「心臓破りの坂」と呼ばれています。登山道で最も斜面がきつく、急な階段が続く道です。最後の休憩から頂上までは全員で一斉にスタートし、一気に駆け上がっていきます。
 
 塾生たちは息も絶え絶えに、しかし最後まで諦めずに登り切って、無事に頂上に到着することができました。
  写真の塾生が、シダンゴ山の頂上に到着一番乗りでした。おめでとう!
 「シダンゴ山、標高758.1メートル」と書かれた看板を持って、記念撮影です。
 全員が頂上に着いたら、みんなでお弁当を食べました。

 自然の中で仲間たちと食べるお弁当は、格別だったのではないでしょうか。
 お弁当を食べ終わった塾生たちは、景色をながめたり、「やっほー!」と大きな声で叫んだりして楽しんでいました。

 また、頂上ではトンボがたくさん飛んでいました。写真の塾生は、上手にトンボを指に止まらせて、周りからの注目を集めていました。
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~記念撮影~
 頂上で記念撮影をしました。みんないい笑顔です。
■ 10月01日(土) 自然体験プログラム ~森の芸術家~
 下山途中の杉林で、2つ目のプログラムを行いました。その場にある自然のものを使って、チームごとに自由に作品を作ります。創作テーマは「シダンゴ山」です。
 倒れている杉の木を利用して作った隠れ家や、シダンゴ山のどこかにあるといわれる伝説の大きな木など、各チーム素敵な作品が出来上がりました。
■ 10月01日(土) 自然体験プログラム ~里山の話~
 さらに下ったところにある雑木林の前で、最後のプログラムとして「里山の話」を聴きました。
 「昔、人間と自然は良い関係でした。人々はご飯を炊くためやお風呂を沸かすための燃料として薪(まき)をとったり、落ち葉を集めて肥料にしたりと、里山から様々な恵みをもらって暮らしてきました。すると木を切った場所からは日光が入り、新しい草や木が育ちました。つまり里山にとっても良いことだったのです。
 ところが今は、人間と自然の関係が悪くなっています。生活が便利になって、里山は放置されてしまいました。手入れされなくなった森は暗く、土が荒れ果てて土砂崩れが起きます。また、使われなくなった里山は削り取られて、マンションやゴルフ場に姿を変えてしまいました。そこにいた生き物たちも姿を消しました。
 どうしたら、人間と自然の関係は良くなるのでしょう。みんな自身で考えてみて下さい。」
■ 10月01日(土) シダンゴ山ハイキング ~自然塾到着~
 塾生たちは疲れていましたが、仲間たちと楽しくおしゃべりをしながら山を下りていきました。帰り道に通った林道の中では、塾生たちの楽しそうな話し声や笑い声が響いていました。

 そして、全員無事に自然塾に到着しました。
 全員で輪になって、1人ずつハイキングの感想を発表しました。
「しんどかったけど、楽しかった。」
「空気がおいしかった。」
「初めて山に登ったけど、最後までがんばれてよかった。」
「頂上の眺めがよかった。」
様々な感想を聴いて、みんなで気持ちを分かち合いました。
 塾生たちがシダンゴ山から拾って帰ってきたものは、土間に並べて展示されました。塾生たちが、自然の落し物をたくさん発見したことが一目でわかりますね。
■ 10月01日(土) 自由時間
 ハイキングから帰った後は自由時間でした。しかし、いくつかのチームは疲れているにも関わらず、チーム農園で作業をしていました。
 前回に雨で十分に作業出来なかったことと、今回のチーム農園作業の時間が短いことを考えて、自主的に取り組んでいたようです。

 写真の塾生は、収穫を終えた夏野菜を片づけていました。
 この塾生たちは、片づけたトマトの株についていた青いトマトを収穫して、ジャムを作っていました。青いトマトの加工方法をスタッフから聞いて、挑戦したくなったようです。
 自然の恵みを無駄なく、おいしくいただきたいという気持ちが感じられます。
 青トマトジャムの出来上がりです。

「おいしい!」
 塾生たちは想像以上の味に驚いていました。 
■ 10月01日(土) 夜の塾活動 ~森の句会~
 塾生たちは、ハイキング中に感じたことや見つけたことをメモしておき、それを俳句にしました。夜の塾活動では、それぞれがとっておきの俳句を1人1句詠(よ)んで、感じたことや思ったことを発表しました。
 最初は恥ずかしがって、前に出るのをためらっている様子でしたが、句会が進むにつれ、だんだん発表したがる塾生が増えていきました。前に出た塾生が1句詠むごとに、「おぉ~。」と驚きや共感の声が上がっていました。

 塾生たちは、同じ山に登っても、一人ひとり感じ方や視点が違うんだということを確認し、仲間たちの様々な思いを、俳句を通して分かち合いました。
■ 10月02日(日) 共同農園作業 ~ラッカセイの収穫~
 第5ステージに種をまいたラッカセイを収穫しました。

 種まきの時に説明を一度聴いているので、ラッカセイの実のつき方はみんな知っています。しかし、実際に土の中に成っている様子を見るのは、ほとんどの塾生が初めての経験でした。 
 ハクビシンよけのネットの間から地上部を引き抜くと、一緒に豆がいくつかついてきました。塾生たちは、「ほんとに土の中から出てきた。」と驚いていました。
 地上部とネットを取り除き、土の中に残っているラッカセイを探し掘りしました。塾生たちは、ラッカセイの掘り残しがないように、丁寧に収穫しました。
■ 10月02日(日) チーム農園作業
 その後はチーム農園作業の時間でした。どのチームも、前回行えなかった秋野菜の種まきや植え付けの続きを行いました。
 塾生たちは、前日に前もって作業を進めておいたり、計画を立てておいたりしていました。そのため、いつもより時間は短めでしたが、順調に予定した作業を済ませていました。
■ 10月02日(日) ステージのまとめ
 ステージのまとめとして、枝村塾頭よりお話をいただきました。
「昨日は天気に恵まれて、シダンゴ山に登れてよかったですね。残念ながら、運動会で行けなかった人が多かったですが、シダンゴ山は気軽に登れる山なので、ぜひ家族で行ってみてください。
 ハイキングのふりかえりでは、色んな感想を聞きました。途中までの道のりが大変だった分、達成感を得られたのではないでしょうか。これを機に、色んな山に登って山を好きになってほしいと思います。
 ステージ担当から、里山の話がありました。人間にとって、山や森は大切です。台風が来た時も、木が根を張ってくれていたおかげで土砂崩れがおきなかったのです。大雨が降ったときに助けてくれるのは木々です。私は時々川で魚釣りをしますが、そのたびに、山と川と海はつながっていると感じます。山の栄養が、川を通して海へ流れていきます。その栄養を海草が吸収して育ち、その海草を貝が食べ、貝を魚が食べます。それらが一つでもダメになると、魚がいなくなってしまうのです。海も、山も、川も大切にして、自然環境を守るようにしてほしいと思います。また、3つの感謝の話も忘れないで、自然を慈しむ心を忘れないようにして下さい。
 残りのステージ数が少なくなってきました。1回1回を大事に過ごしてほしいと思います。」
■ 編集後記
 今回はハイキングに加えて、おかげさまの気持ちについて話をしました。誰しも子どもの頃は、親や周りの大人から「感謝しなさい」と言われます。しかし、なぜ感謝しなければならないのか、子どもたちはよくわからないまま、ということが多いのではないでしょうか。そこで今回は、「感謝の気持ちの反対は何か?」ということや、「当たり前にあるものがもしも無かったら?」ということを問いかけ、様々なもののおかげで今の自分がいるということを、塾生たちに考えてもらいました。
 塾生たちには、おかげさまの気持ちが自然に湧き出て、あらゆる場面で感謝することができる人になってほしいと思います。そして、自然に対して感謝の気持ちが持てるようになった時、自然を慈しむ心を実感できると思っています。
 残りのステージはあと4回となりました。だんだんと卒塾が近づいてきています。当たり前のように塾に来ることも、あと2ヶ月で終わりです。塾生たちには、1回1回のステージをを大切に過ごしてほしいと思います。
K.K.