2011.09.23~25
第14ステージ ~男子~
ステージテーマ:「里山ハイキングを通して自然と人間について考えよう!」
共同生活の目標:「今までの目標の中から個人で1つ選ぶ」
今回のステージのメインイベントはシダンゴ山ハイキングでした。シダンゴ山ハイキングには3つの目的がありました。まず1つ目は山林の中を自然を観察しながら歩き「地域の自然を知る」こと。2つ目は今まで農作業できたえた体力を活かし、最後まで自分の力で登りきることで、「自分の体力(の限界)を知る」こと。3つ目はハイキングのプログラムを通して「里山の環境の変化や人間との関わりについて学び、考える」ことです。そこで上記のテーマを掲げました。
共同生活の目標は、今までの6つの目標が二巡しました。ステージも残りわずかとなり、これから塾生たちには今まで以上に自主性をもって活動や共同生活に取り組めるよう心がけてもらいます。そのひとつとして今回の共同生活の目標は自分が最も苦手とする目標を個人で選びました。
■ 09月23日(金) 夜の集い
ステージを始めるにあたり、塾頭よりお話しがありました。
「大きな台風が上陸しましたが、どのように過ごしていましたか?みんながバスで通る道も大木が倒れて通行止めになったり、畑もトタンや作物が倒れ自然塾周辺も被害をうけました。今年はいろんな天災がありますが、インターネットで大きな感動を与えている言葉があったので紹介します。東北地方で大きな地震が起こった後、卒業式で答辞を述べた人が泣きながら言った言葉で「地震によって自然の力の大きさを知ったが、自然をうらまずみんなで助け合って生きていこう」というものです。大きな災害が起こると自然をうらんでしまうものです。しかし、自然は時には恐ろしいですが、多くの恵みを与えてくれます。
人間は自然の中に生かされています。その自然をうらまず、乗り越えて前に進むことが大切です。みんなも自然塾にきて少しずつ自然について感じてくれていると思いますが、明日は山の上で自然を感じて欲しいと思います。
シダンゴ山ハイキングの目的はいくつかありますがその中の二つをお話します。一つ目は自然のすばらしさ、大切さを学んで欲しいということです。いろんなものを観察しながら、おいしい空気を吸いながら、「自然を慈しむ心」って何なのかなということを感じて欲しいと思います。いろんな動植物がどんな風に関わりあっているのかを見てもらい、人間はどのように関わっていけばよいか考えて欲しいと思います。
二つめは「自分の体力や気力を確かめる」ということです。今までつらい農作業を頑張ってきた証(あかし)として、頑張って登ってほしいと思います。
明日は、14ステージまで無事にこれたこと、元気に登れることはいろんな人のおかげです。おかげさまの気持ちを忘れずに登りましょう。」
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング ~出発~
荷物や装備の準備をし、準備体操をしたらステージ担当よりハイキングでの注意点の説明がありました。
全て準備ができたら、いよいよ出発です。
歩く順番はチームとは関係なく自由なので、自分の体力と相談しながら、自分のペースで歩き始めました。
ハイキングを楽しみにしていた塾生も多く、自然塾を出発したときはみんな元気で楽しそうな様子でしたが、帰ってくるときはどうでしょうか?
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング ~登山道入り口~
登山道の入り口で小休止をとりルートを確認しました。はじめに小さな宮地山という山を登頂してから、そのまま奥にあるシダンゴ山へ登ります。
また、ここでは「3つの感謝」の話がありました。「3つの感謝」とは①住民でもない人間が本来の住民である自然の動植物の間に入っていくのを許してくれる自然に対して感謝しなければならないこと、②登山道を歩く時は、多くの献身的な労力によって切り開かれ、また維持するためにも大変な労力が注ぎ込まれている事に感謝して歩かなければならないこと、③登山に送り出してくれた家族の理解、塾スタッフや周囲の人々、健康な体など、多くの条件が満たされて山に登れる自分があるという事に感謝しなければならないこと、です。
説明の後、宮地山の頂上を目指し出発しました。
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング ~登山~
登山道に入ると、今までの舗装(ほそう)された道とは違い、細く傾斜がきつくなっていきました。倒木をまたいで進むところもあり、冒険のようでした。
頂上に近づくにつれ、まわりに生えている木の種類も変わってゆき、木漏れ日のなか進んでいると、人の住む世界から、動物たちの住む自然の世界へと移っている、印象を受けました。
■ 09月24日(土) 自然体験プログラム ~ネイチャービンゴ~
宮地山頂についたら、プログラムのひとつ「ネイチャービンゴ」を行いました。ビンゴシートには数字の代わりに「どんぐり」「においのするもの」「自分の顔より大きな葉っぱ」など自然の中にあるものが書いてあり、チームごとに見つけたものに丸をつけ、丸が3つ並ぶとビンゴです。
塾生たちは、足もとだけでなくいろんなところへ目を向けて見つけていました。しばらくすると次々と「ビンゴ!」と言う声が聞こえてきました。
そして、みんなで見つけたものを見せ合いました。「背中の模様が顔に見える虫」、「木に鳥があけた穴」などよく目を凝らさないと見つからない面白いものがたくさん見つかりました。
同じ場所でも視点を変えると今まで見えなかったものが見えてきます。このゲームのねらいは遊びながら自然界に意識を向け、五感を使ってハイキングを楽しむきっかけをつくることです。
塾生たちはビンゴが終わった後も登山道を歩きながら虫や、きのこ、木の実などたくさんのものを見つけたり、触ったりして楽しんでいました。
■09月24日(土) シダンゴ山ハイキング  ~登山~
プログラムが終わると、再びシダンゴ山の頂上に向けて出発です。登ったり下ったりを繰り返す道を進むにつれ、塾生たちの口数は減り、表情も険しくなってきました。
頂上へ近づくと、木々の間を通りぬける風がいっそう涼しくなり、標高が高くなったことを実感しました。塾生からも「風が変わった」と声が上がり、微妙な変化を身体で感じることができていました。
橋の上で記念撮影。ここまでくれば頂上まであと少しです。
「頂上まであとどれくらい?」ときいてくる塾生も増えました。焦る気持ちを抑えながら足元に注意してシダンゴ山の頂上を目指しました
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング  ~頂上~
頂上へ続く最後の上り坂はひときわ急な傾斜で階段が続くため、自然塾では『心臓破りの坂』と呼んでいます。最後の休憩から頂上まではいっせいにスタートし、一気に駆け上がります。最初勢いよくスタートした塾生たちでしたが、徐々に前と後ろの差が開いていきます。どこまでがんばれるかは体力だけでなく、精神力の戦いでもあります。スタッフからの応援の声に「もう体力の限界超えたよ。」と言っている塾生や、頂上に着いたらそのまま草むらに倒れこむぼど全力を出しきった塾生がいました。
写真の塾生たちは1位、2位、3位の塾生です。おめでとう。登頂した塾生たちの顔は疲れているけれども、達成感に満ちあふれたものでした。
全員が山頂についたら早速「いただきます」をしてお弁当を食べました。調理師さんたちが朝早くから準備してくれた手作りのお弁当はとってもおいしかったです。
青空の下で食べるお弁当は格別ですね。
頂上にはトンボがいっぱい。塾生たちは自分の指にとまらせようと必死でした。
頂上からの眺めもきれいでしたが、頂上の景色も秋らしく印象に残りました。
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング ~記念撮影~
出発前に頂上で記念撮影をしました。
■ 09月24日(土) 自然体験プログラム ~森の芸術家~
下山途中の杉林で2つ目のプログラム「森の芸術家」を行いました。内容はその場にあるものを自由に使いチームごとに『シダンゴ山』を表現するというものです。
なかなかアイディアが浮かばなくて苦労しているチームもありましたが、切り株を使ってシダンゴ山の神様のイスを作ったり、山男の家をつくったりと各チーム工夫して作り上げていました。
■ 09月24日(土) 自然体験プログラム ~里山の話~
さらに下ったところにある雑木林の前で、最後の自然体験プログラムとして「里山の話」を聴きました。
「電気やガスがない時代、ご飯を炊いたり、お風呂を沸かしたりするための薪(まき)をとり、畑の堆肥にするための落ち葉を集め、里山は生活の一部として利用され、大切に守り育てられてきました。
生活が便利になるにつれ、里山は利用されなくなり、開発されてなくなってしまったり、放置されてしまう里山が増えました。里山は管理されなくなると木や枝が伸び放題になり、竹や笹がたくさん生えて他の木が枯れてしまい、荒れ果ててしまいます。
そして、動物たちの餌が減り、限られた生き物しか棲(す)めない環境になってしまいます。里山は人間の生活だけでなく、生き物たちにとっても大切な役割を果たしていたのです。
里山がもう一度見直されていますが、人間が過去の暮らしに戻ることはできません。ではどうしたら、豊かな里山を維持できるのかみんな自身で考えてみてください。」
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング ~自然塾到着~
登りとは違う林道を通り下山しました。疲れていましたが声を掛け合って、はげまし合いながら下山する塾生もいました。
塾舎が見えてくると、塾生の顔にも笑顔が戻り、自然とペースも速くなりました。
そして全員が無事に塾舎に帰ってくることができました。
感動や達成感を忘れないうちに1人ずつ感想を発表をしました。「山登りは初めてだったけれどみんなで一緒に登れて良かった。」「下り坂が思ったよりも大変だった。」などの様々な感想を聞くことができました。
■ 09月24日(土) シダンゴ山ハイキング ~番外編~
台風の後ということもあり、いつもより自然の落し物がいっぱいあり、楽しい発見もありました。塾生たちが拾ってきたものを紙に並べると、展示ができるくらいでした。
■ 09月24日(土) 夜の塾活動 ~森の句会~
今回のハイキングの中で感動したことや発見したこと、思いついたフレーズなどを自由に俳句に表現し書き溜めておいてもらいました。夜の塾活動ではその中から気に入った俳句を1人1句清書し、発表してもらいました。
みんなの前で自分のつくった俳句を詠(よ)み、そこに込めた思いを発表してもらいました。人それぞれ感じ方が違うことや、同じ情景を詠(よ)んだものでも人によって視点や表現の仕方がかわると全く違うものになることなどたくさんの驚きや発見、共感がありました。俳句に合わせて、絵を描いた塾生も多く、目で見ても楽しむ事ができました。
■ 09月25日(日) 共同農園作業 ~ラッカセイの収穫~
第5ステージに種をまいたラッカセイが収穫の時期をむかえました。ラッカセイは漢字で「落花生」と書きますが、花が咲いたところから柄が伸び、土の中で豆が育ちます。花が落ちたところに豆が育つように見えるため落花生や地豆と呼ばれます。
種まきの時に説明は聴いていますが、実際に見るのはほとんどの塾生が初めてです。
ハクビシンよけのネットの間から地上部をぬくと一緒に豆も見えてきました。「わぁ。いっぱいついてきた。」とはじめて土の中のラッカセイを見て歓声があがっていました。
地上部をとり、ネットを片付けたら、土の中に残っているラッカセイを探し掘りしました。せっかく実った豆を無駄にしないよう、丁寧に作業しました。
■ 09月25日(日) チーム農園作業
今回のステージは土曜日がハイキングで共同農園作業ができなかったため、チーム農園の時間がいつもより短めでした。そのためか、終了時間ぎりぎりまで作業していました。
チーム農園でもラッカセイを収穫していました。共同農園作業で行った収穫のしかたを思い出しながら作業していました。
収穫したラッカセイをみんなで分けました。お家でおいしく食べたでしょうか。
このチームはリーフレタスを植えつけていました。苗の扱いもなれ、素早く植えつけることができていました。
このチームは前回できなかった分の土づくりと種まきを行いました。また、前回種まきをしたもので芽が出ていないものがあったのでまき直しをしていました。
■ 09月25日(日) まとめ
ステージのまとめとして塾頭よりお話しがありました。
「今週は天気がよく全ての予定を行うことができました。ハイキングにも行けました。途中何箇所かつらいところもありましたが、最後まで頑張って自分の力で登りきることができました。日頃の農業できたえた頑張る力を十分に出してくれました。自信を持っていいと思います。
昨日、雰囲気を乱し注意された人がいました。集団生活ではときに面倒くさいことや思い通りにいかないときもありますが、集団だからこそ楽しいことや集団でないと出来ないということもたくさんあります。だから、集団を大切にしてほしいと思います。みんなで力を合わせて達成感を得られるようにすれば楽しくなります。ぜひとも集団をもりあげて協力するようにしてほしいと思います。
昨日、ステージ担当から里山の話がありましたが私からも一つ話をします。私はよく魚釣りをやるのですが、『山と川と海って本当につながっているんだな』と感じます。山から流れ出た栄養分が川や海の魚の栄養になります。山がダメになると海もダメになり、川がだめになっても海がダメになります。だから山は大切にしないといけません。また、山の木は土砂崩れを防いだり、酸素を生み出してくれています。昨日は山を通じて自然のありがたみを感じてくれたのではないかなと思っています。その感じたことをこれからも活かしてほしいと思います。また自然を慈しむ心を持ってほしいと思います。」
■ 編集後記
今回のステージはシダンゴ山ハイキングに出かけました。ただ山に登るだけではなく、自然観察を楽しみながら、自然と人間の共生について考えてもらいました。出発してすぐは、自分の足元しか見えていなかった塾生も次第に周りの木々や、落ちている木の実などに目が向くようになっていました。『まわりに意識を向けるといろんなものが見えてくる』ということはハイキングだけでなく、他の様々な場面でも同じです。それは自然だけでなく、人に対しても同じです。畑へ向かう道、畑の作物、家の近くの公園、みんなで作業をしているときのチームメイトの様子など、少し立ち止まってまわりを見てみると今まで見えていなかったもの、気付かなかったことが見えてくるかもしれません。
共同生活の目標は今回から個人で選んでもらいました。活動も残り4ステージ。塾生のみなさんは自分で考えて、自分から進んで行動できていますか?スタッフから言われるまで動かない、リーダーに言われたことをやっているという人はいませんか?自主性をもつというのは簡単に思えて難しいものです。残りの活動ではぜひ、ひとりひとりが自主性を持ち、チームをそして10期生全体を盛り上げられるようなってもらいたいです。
K.T.